「大英帝国の長い歴史が最終章に入った、いま、このときに」

2019年12月15日 11:38

英国で保守党が地滑り的に勝利したのは、「EU離脱(国家主権回復)か、それとも社会主義(公共サービスや鉄道の国有化)か」という噛み合うことのないイデオロギーが争点になったからだ。今回の選挙中、奇妙なことに、ジョンソン首相はEUという敵に対して一つの国として団結しようと訴えつづけた。一方で、最大野党の労働党は、終盤まで、EU離脱について態度を明確にしなかった。そもそもは、治安や雇用事情の悪化が、なぜかEU離脱という考えに結びついたことから始まった停滞だった。いま、先進諸国において先ず求められているのは、税制改正による富の再分配である。このまま生活者の保護を怠りつづけば、現代社会を正しく批判的に問い直し、「わたしたちが何を厭い、何に頼るべきか」を知ることが出来なくなるだろう。「なぜ、わたしはこの国に生まれたのだろうか」という思いが澱のようにたまれば、声の大きい者による社会全体への支配を可能にする。人は、疲れ切ったり、困り果てたほど、現実から逃避しようとする。たとえ嘘つきであっても、はぐらかし上手であったり、パフォーマンス上手な者を支持する。愛嬌があれば尚更だ。わたしたちは、このような時代における民意は必ずしも正しいわけではないことを他山の石にしなければならない。大英帝国の長い歴史が最終章に入った、いま、このときに。

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